「地元工務店が生き抜く会 in 石巻」に弊社代表が登壇しました。

2017年11月10日(金)に石巻グランドホテル(宮城県石巻市千石町2-10)で開催された「地元工務店が生き抜く会 in 石巻」に弊社代表がパネラーとして登壇しました。

11月10日(金)13:30~ 
パネルディスカッション「災害に取り組む工務店の対処法」
~いざ災害が起きた時の対処によって地場工務店の真価が問われる~


当日の様子(日本住宅新聞11月25日号) 当日資料【PDF】

以下パネルディスカッション内容(抜粋)

Q1.安心計画さんのように工務店の営業支援ソフトの販売や運用サポートをしておられる立場からは、これからの工務店の取り込みをどのようにお考えですか?
A1.今は以前のようにお施主と間取図だけでプランの打合せをすることはなく、CGパースを使ったビジュアルな提案が一般化しています。さらに最近はVRを使った提案なども増えてきて、視覚に訴えるプレゼン手法は目まぐるしく進化してきています。
しかし、目に見える「意匠」のプレゼンばかりにITの活用が進み、目に見えない「構造」や「耐震」などについてはまだ十分に活用されていないようにお思います。既に活用可能なレベルなのにもったいないことだと思います。しかし、今までは見た目ばかりに気をとられていた工務店もお施主も、大きな災害が続いたことで、デザインも大切ですが、自分や家族の安全・安心こそが最も重要だと考えが変わってきたように思います。ですから、安全や安心のプレゼンはこれからがようやく本番と言えるのではないでしょうか。
Q2.意匠デザインの善し悪し、または好き嫌いは、見ればすぐわかりますが、「構造」や「耐震性能」が一目でわかるプレゼンというのは難しいのではないでしょうか?
A2.そのとおりで、知識と経験が豊富な建築のプロであればプランや構造図を見れば構造の善し悪しや耐震性能がわかるかもしれませんが、誰もがそうとは限りません。お施主にいたっては、そういう専門知識が無い人がほとんでしょうし、工務店でも専門知識やお施主に伝えるスキルは各人まちまちでしょう。
 それでも、工務店はお施主に安全や安心をわかりやすく説明し、自社の技術をしっかりアピールする必要があるわけです。そのためにITツールをもっと効果的に活用するべきだと思います。いまや住まいの提案は意匠デザインのアピールだけでは十分ではなく、安全・安心面にきちんと配慮し、それをアピールできなければ差別化どころか選ばれる業者の候補にも入れなくなってしまうでしょう。
Q3.ITツールを活用して具体的にどのようなことができるのでしょう?
A3.ポイントは、直下率と偏心率と耐震等級の3つです。
まず、直下率ですが、これは皆さんご存知のように上下の階の柱や壁の場所が一致している割合のことです。熊本地震の写真もそうですが、潰れた1階の上にほとんど無傷に見える2階が乗っている倒壊例が多く見られ、直下率に問題アリということが指摘されています。
 この直下率は、1~2階の間取りさえわかれば、図を重ねてみるだけでおおかたの構造の強度がわかる最もシンプルな構造チェックだと言えます。柱は50%以上、壁・耐力壁は60%が推奨値となっていますが、コンピュータならワンタッチで計算結果を出してくれます。プランニングの途中でもいつでもチェックできるのがミソで、プランが変更になってもすぐに再確認できます。
 きちんと活用すれば、プランが確定してしまってから構造に基本的な問題アリと気づくなどというトラブルを回避できます。直下率はプランが決まってからチェックするのではなく、チェックしながらプランニングするべきなのです。
Q4.初期プランニングの段階でも常に構造にも配慮必要ということですね。では次のポイントは何でしょう?
A4.次は偏心率ですね。
 偏心率とは、これも皆さんの方がよくご存知かもしれませんが、“ネジレの抵抗”に対する建物の重心と剛心のズレの割合ですね。30%以内であればネジレに強いということです。この印が輪の内側であればよいわけです。こういう計算もコンピューターの得意なところです。せっかく平立パースが出る3D-CADでデータを作成しているのならここまで活用しないともったいないということです。
 しかも同時に耐力壁の必要軸組と配置バランスは営業マンにもお施主にも一目でわかるよう○×判定できるものもあります。これが安全・安心のビジュアルプレゼンであり耐震性能の“見える化”にもつながるわけです。高齢のお施主に対しての説明にも有効です。
Q5.最近ではお施主自身も口にする耐震等級についてもお願いします。
A5.耐震等級は建物の耐震性能を素人にわかりやすく伝えることが目的で制定されたそうですから、これこそお施主に説明するための言葉ともいえます。
 表(当日資料PDF参照)のように等級1は基準法と同等の耐震性である1.0倍、等級2は1.25倍で学校や病院など避難所に適用されます。等級3は1.5倍で消防署や警察などの防災拠点に義務付けられています。熊本地震以来、耐震等級3という言葉がメジャーになりました。同時期に住宅を検討中のお施主の多くが地震対策の変更を検討し、等級3希望が大幅に増えたそうです。
 熊本地震のように震度7の地震が2回発生しても倒壊しないためには等級3の強度が必要と言っている研究機関もあります。もちろんこちらの判定もCADソフトを使ってチェック可能です。当社が建てる住宅はすべて等級3とアピールして差別化を図ることもできますし、その体制を短期間に整えるための研修などもあるので、それらを利用して早期対策を図ることもできます。

 また、余談ですが、地場工務店としては、お施主の要求に応えるべく等級3を標準的に提供できる環境を整えるのと同時に、自社の社屋も地場の防災拠点となるべく措置が必要ではないでしょうか。工務店の社屋がお施主の家より先に倒壊しては目も当てられません。
Q6.では最後に一言お願いします。
A6.先ほども言いましたが、プランができてから構造チェックをするのではなく、プランニング中や、プランが少しでも変わるたびに構造チェックをし、常に安全面に配慮していることがお施主へのアピールになり、お施主の安心にもつながります。
 営業マンが提案段階から耐震を意識することで、いい加減なプランが設計に渡った後で大幅にプラン変更になるリスクも防げます。このように提案初期から安全・安心に配慮した提案をすることが定着すれば、工務店とお施主両方の安全・安心への意識が高まり、そのことがこれからの震災対策を促進することになると思います。